武士道に学ぶ【誠】思いを実現させる言葉の力

武士道「誠」

この記事では武士道を特徴づける「7つの徳目」のひとつ「誠」について解説します。

単に「誠」とはどういう教えだったか?というだけではなく、次のような視点を大切にしています。

  • 「誠」の真の意味するところは?
  • 「誠」は現代の私たちにとってどんな存在か?
  • 私たちはこの「誠」をどんな風に活用していけばいいのか?

私たちが今もなお受け継いでいる武士道に、心理学の要素を交えながら、現代の教訓として活用していく。

それが私たちココロエの目指すところです。

  • 人としての「在り方」とは何なのか知りたい。
  • 自分の「在り方」を見つけたい!決めたい!

そういうことを考えている方には、何かヒントがあるのではないかと思っています。

是非最後まで読んでみてください。

目次

「誠」の目指すところ

「言う」を「成す」と書いて「誠」です。

その意味するところはそのまま「言ったことは必ず成しとげる」という強い意志を表しています。

それは「約束は必ず守る」ということであり「正直」であることを意味します。

単に「嘘をつかない」というだけであれば、最初から約束なんてしなければ実現できてしまいます。

そうではなく、自分で「言ったこと」が「達成」されること…

「有言実行」こそが「誠」の目指すところとなります。

武士は嘘を嫌いました。

嘘をつくことは悪いことであり「義(正しいこと)」に反するという意味ももちろんありますが、嘘をついてしまうのは「自分の弱さ」からだと考えられていたからです。

つまり「正直」であることは「強さ」でもあるということでしょう。

派生語

派生語として、私たちのよく知っているものはこの2つでしょうか。

  • 誠実:正直で真面目であること
  • 誠意:まっすぐで正直な姿勢、気持ち

この意味がそのまま武士道の「誠」が求めているものです。

正直で真面目な人なら私たちの身の回りにもたくさんいそうですが、そこに命までかけている人はまずいないですよね…

武士たちの「有言実行」には、それほどの強い意志があったようです。

武士に二言なし

「武士に二言なし」とは…

「武士が一度口に出したことは必ず果たされる」つまり「武士は必ず約束を守る」という意味です。

そのため、武士の約束事に証文は不要で口約束だけで十分…むしろ証文が必要になることは不名誉なことだと考えられていました。

今で言えば契約書や証書のような証拠書類は不要だということです。

これは武士に許された特権とかそういう意味ではなく、武士ならば「命に代えてでも約束を実行しなければならない」という強い信念を持っていたことが絶対的な信用となっていたからです。

武士というそもそもの身分の高さと、こういった強い信念から、武士の言葉には相応の重みがあると考えられ「武士の一言」とも言われました。

ただしその重みがゆえに、安易な約束を避けるためにも、寡黙さを美徳として考えるようになっていったとも言われています。

嘘か誠か

今でも時代劇などを見ていると「嘘か?誠か?」というセリフに出会うことがあると思います。

この場合の「誠」は「本当(真実)」という意味です。

「誠」とは「正直であること」という行動規範的な意味だけでなく、そのまま「本当(真実)」という意味も持っているということです。

正直者は何を見る?

新渡戸稲造の「武士道」でも紹介されていますが、こんな歌があります。

心だに誠の道にかなひなば祈らずとても神や守らん

菅原道真

「心の持ち方さえ誠の道に沿っていれば、祈らなくても神のご加護はあるものだ」

真面目に正直に生きてさえいれば祈らなくても神様は守ってくれる。

つまり真面目に正直でいれば、物事は必ず良い方向へ向かうという感じでしょうか。

至誠にして動かざるものは未だこれ有らざるなり

孟子

「誠を尽くして向き合えば、心動かされない人はいない」

例え小さな約束であっても守り続けていれば、間違いなく信用や信頼が集まるはずです。

ましてや明確な目標をかかげて「有言実行」する人なら、時に人に感動を与え、尊敬を集める事にもなるでしょう。

これら二つの言葉から見ても、正直、真面目、誠実であるということは、私たちがイメージする以上に重みのある大切な美徳だと考えられていたことが分かります。

私たちにとっての「誠」とは

現代の私たちにとっての「誠」とは、命をかけるようなものというよりも、むしろ普段からあまり意識したりしなくても「当たり前に持っているべき資質」という印象を感じます。

私たちも「誠」の心をしっかりと受け継いでいます

ルールを守る

日本人はルールを大切にします。

法律などの明確に定められたものだけの話ではありません。

日常の中での暗黙なルールのようなものであってもしっかり守ろうとします。

  • 通路やエスカレーターでの片側通行
  • 電車を待つ際などに整列する
  • 並んだ列の順番を守る

たとえ被災地にあっても順番を守って整列していた姿などが報じられ、日本人は世界中から賞賛を受けました。

もちろん日本人全員の話ではなく、残念ながら様々なルール違反をする人もたくさんいますが、それでも全体として見た時の日本人の真面目さ、正直さは世界一に違いないと思います。

企業も誠実

  • 電車やバスなどの交通機関の時間の正確さ
  • ネット通販で商品がほぼ期日通りに届く

私たちにとって当たり前に思えることでも、実は海外ではそうではないことが多々あります。

個人だけではなく企業の誠実さも日本ならではです。

お天道様が見ている

街中で当たり前に目にする自動販売機。

お金だけでなく、飲み物や食べ物まで中にあることが分かっていながら、壊されて盗まれるような話はあまり聞きません。

街中のいたるところに、これほどたくさんの自動販売機がある国は日本だけとも言われています。

当たり前ですが私たちはちゃんとお金を入れて、商品を購入します。

野菜などの無料販売所も同様で、周りで誰も見ていなくても、きちんとお金を置いていく人がほとんどでしょう。

更には、落とした財布が見つかるのは世界中で日本だけ…というのも有名な話です。

なぜここまで正直なのか?

私が子供の頃「お天道様が見ている」とよく言われました。

お天道様とは太陽のことですが、それは神のことを言ってると思います。

「どこにいたって必ず誰かが見ているから恥ずかしいことはするな!」

というような考え方で、子供の心を育てるのにとても美しい教えだと思います。

大人になった今改めて感じるのは、誰も見ていない時であっても、常に「自分が見ている」ということです。

だからこそ自分が恥じるような行動はしないように。

これは、武士道「名誉」の教えの基本でもあります。

「誠」の反動

「誠」は、意志の強さを表す美徳と言えますが、その求められる強さゆえに現代の私たちに重い十字架を背負わせてしまうことも少なくありません。

ここからは、正直で誠実であろうと思うあまり、むしろ自分自身を苦しめてしまう点について解説します。

自責の念

借金に悩み犯罪を犯す、最悪の場合は自ら命を絶つ…

こういうことをするのは、世界でも日本人だけだと言われています。

借りたものは返すのが当たり前。

返せないヤツが悪い。

何がなんでも返せ!

約束を絶対に守ろうとする「誠」の心が透けて見えます。

悪質な取り立ては、こういう心理につけ込んでいたわけです。

近頃では悪質な取り立ては通用しなくなり、債務整理の方法も認知されるようになってきたため、こういうことは少なくなりましたが「約束を守らないヤツが悪い」という心理はまだ根強く残っていますよね。

まだまだなくならない振り込め詐欺みたいな輩がこの辺の心理を狙っているように感じます。

約束を守らなければ確かに「嘘」ですが、努力を重ねてそれでも守れなかった場合、それも「嘘」と呼ぶのかどうか?

「誠」の目指すところは確かに「有言実行」ですが、武士道には「仁」という「寛容さ」もまた、大切な美徳とされています。

そして、何が「正しいこと=義」かを判断する際に「寛容さ=仁」は不可欠な要素とされています。

そういう意味からみても「やらなった」と「できなかった」は明確に違う物だと考えたいです。

何より「有言実行」を重んじるあまり、約束すらできなくなってしまうとしたら「正直さ」の意味自体も失われてしまうことになりかねません。

失敗を許さない

夢や目標を言葉にすることを苦手とする日本人は多いと思います。

実行できるかどうか以前に、できない時を想定して発言すること自体を避けようとします。

ある意味、武士が寡黙を美徳としたのと似ていますね。

時には、大きな目標を口にした人を「ビッグマウス」として、批判することさえあります。

なぜこうなってしまうのか?

口に出して失敗した場合、カッコ悪い、恥ずかしい、というような心理が働いたりします。

また、先の例のように「言葉にして失敗をしたら嘘をついているのと同じ」というような考えから、信用を失う事への恐怖心のようなものが働いているようにも見えます。

まるで「失敗が許されない」かのような息苦しさを感じます。

武士たちと違って、私たちは失敗によって命を失うことはありません。

命があるから再チャレンジもできます。

つまり、私たちの失敗とは結果ではなくまだ途中経過です。

それなのに、途中のうまくいっていない状況にフォーカスして最終評価されるとしたら、確かに不用意な発言を避けたくもなるでしょう。

そうするうちに、ただ発言しないだけでなく、チャレンジすらしなくなってしまう…

そういう人が増えていくとしたら、あまりにももったいないことだと思います。

やはりここでも大切なのは「寛容さ=仁」です。

失敗した人を責めたり笑ったりしない「人に対する寛容さ」と、失敗したことで自分にダメ出ししたり責めたりしない「自分に対する寛容さ」の両方が必要だと思います。

言葉の力

「誠」とは「約束を守ること」ですが、それはただ「言葉にした以上は絶対守る」という意志の強さだけで実現させるものではないと私は考えています。

心理学に「宣言効果」というものがあります。

※宣言効果

自分の夢や目標、やるべきことなどを他の人に宣言することで、達成されやすくなること

つまり明確に言葉にすると実現する方向に向かい始めるということです。

他には「ラベリング効果」なども同様です。

※ラベリング効果

人間は「~に違いない」「~なタイプ」などの先入観や思い込みを常に持っている。その特性を利用して、ポジティブな思い込みを持たせることでポジティブな結果に向かわせようとすること。

皆さんがよく聞いたことのある「引き寄せの法則」などでも言語化の重要性が言われています。

武士たちは恐らく「武士たるものはこうあるべき」と武士ならではの生き方を日々言葉にしていたのだと思います。

実際に言葉にすることで、まず自覚が生まれ、そこに意識が向くようになり、周りで聞いている人もそういう目で見て、そのつもりで接するようになっていきます。

すると更に自覚が強まり、更に意識が・・・といった好循環が作られていきます。

武士の家に生まれたら生まれつき意志が強い・・・なんてことはあり得ません。

「武士たるもの」という言葉をかけられて育ち、やがて自分で自分にその言葉をかけていく、そうしていくうちに武士ならではの強靭な意志が作られ「武士道」という生き方が実践されていく…

そんな流れができていたのではないでしょうか?

彼らの時代には今ほど人間心理は解明されていなかったはずですが、言葉を重んじるということは心理学的にも理にかなっていたということが言えます。

もしあなたが新しい自分を見つけたいと思うなら、使う言葉を変えてみてください。

そこから変化が始まるということです。

まとめ

私たちココロエでは、武士道に心理学の要素を加えながら「自分だけの武士道を作ろう!」ということを目的としています。

私たちは、武士道「誠」を次のように定義したいと思います。

  • 言葉にして行動すること
  • 思いを実現させる言葉の力

武士道は「神道、仏教、儒教」の考え方が入り交ざった、何でもありのいいとこ取りの教えです。

武士道に正解はありません。

是非あなたも、自分の大切な価値観を混ぜ合わせて、自分なりの武士道を作ってみませんか?

音声配信

音声による簡単解説もあります。

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武士道の教え【誠】 - 【武士道×心理学】自分を知る!自分を育てる! | stand.fm 武士道7つの教えの一つ【誠】について解説します。 「言う」を「成す」と書く文字通り「有言実行」の教えです。 #武士道 #心理学 #有言実行 #自己肯定感

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著者:平野尚紀
ココロエ代表トレーナー
全米NLP協会公認NLPトレーナー/米国NLP&コーチング研究所認定DSRトレーナー/NLPマネークリニックトレーナー/日本NLP協会認定NLPセールスコンサルタント/武士道家/会社経営者/心理カウンセラー/サムライスタイル運営/ココロエ運営。
武士道を知ることで、自分の思い込みや人から作られた価値観が見えてくる。そこから卒業した時、本当の自分を生きることができるようになる。そんな思いを『武士道×心理学』という講座に込めて、お届けしています。
武士道「誠」

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