「起業」をゴールにしてしまった人の末路

今や「起業」という言葉は、ごく身近な言葉になりました。
会社員をやりながら、副業として起業をするという人もいたりします。
ひとつの働き方として、新たな収入源を増やす方法として、起業という道を選ぶ人が増えてきているのを感じます。

そのこと自体はとてもいいことだと思っているんですが、最近違和感を覚えるようになってきたのが…

「起業」そのものが目的になっている人を、よく見かけるようになったことです。

「やりたいことがあるから起業する」ではなく、「起業をするからやりたいことから探したい」という状態。

「起業」というのは、漢字を見ても分かる通り、本来はスタートラインに立った状態です。
そこから自分の事業を展開して、その事業を通じて、自分の目標や目的を達成していく。
当たり前の話ですが、起業しただけでは、まだ何も達成できていないということです。

では「起業」をゴールにしてしまうと、どうなってしまうのか?
この記事では、そのリスクについて、自分の体験談から思うことをお伝えしたいと思います。

目次

「起業」がゴールになってしまった

私は2005年に会社員を辞めて、法人を設立しました。
その時の私の目的は、「会社を辞めること」でした。

ただ会社員を辞めたくて、その選択肢として散々考えた挙句、「人から勧められて」起業を選択しました。

つまり私は「起業」をゴールとしては考えていなかったんですが、会社員を辞めた時点で目的は達成されているので、結果的に「起業がゴール」になってしまったんです。

いきなり法人を設立したわけですが、勤めていた会社とは全くの異業種。
完全に未経験の事業で法人を設立しました。

しかもやりたかったわけでもない、何となく自分にもできそうだという理由だけで、ネットで見つけた人材ビジネスの起業支援を活用して起業しました。

さらに、会社員時代は転勤族だったため、どこで起業をするか迷った結果、大学時代を過ごした街というだけの理由で、既に友人とのつながりもなくなった名古屋を選びました。

経験なし、人脈なし、あるのはいくらかの退職金。
それだけで法人を設立してしまったことになります。

かなりの無謀だったと思います。
振り返れば、会社さえ辞めれればなんでも良かったんだろうなと…
そうとしか思えないんですよね。

会社を設立した時点で、私の目的は完全に達成されました。
その状態で、私はスタートラインに立っていたということです。

目的のない経営者

既に目的は達成され、特にやりたいわけでもない事業を自分の会社として取り組んでいく。
それでもうまく行っている時は、何も問題はありません。

問題は、行き詰まった時です。

起業をして3年ほどで、社員を数名抱えた状態になり、数字の面でもここからどうにか食っていけそうだと思った翌月・・・
リーマンショックが起こりました。

当たり前ですが、自分は真面目に、そして地道に努力を積み重ねていたとしても、事業の存続をおびやかすようなことは起こります。

そしてこういうピンチになった時に、目的が「ただ会社をやること」みたいな曖昧な状態だと、前向きに取り組む気持ちや、耐える力が足りなくなってくるんです。

ただ、すべてが苦痛で、自信を失い、社員全員辞めてもらうことになり、仲間も失っていく。

それでも、妻が一緒にやってくれていたこともあって、ここから私は「存続する」という一点だけに全振りしていくことになります。

飲食店のフランチャイズ、販促システムのOEMやいくつかの代理店ビジネス、もちろん自分でイチから作ったものも含めて…
うまくいったか?と思ったら、崩れる。そんなことを何度も繰り返しながら、今年で21年経ちました。

「長く続ける秘訣は?」と聞かれることがありますが、答えは1つ…
ただただ「辞めなかっただけ」です。

身近な人からも、そろそろ覚悟をしたら?と言われるくらい、普通なら辞めてしまうような場面でも、辞めるという選択肢を持たなかったこと。

それしかありません。
そしてそれは、「存続する」という、目的を持ったからだと思っています。
いろんなことに手を出しては、いろんな人から「ブレてる!」と言われましたが、目的はずっと変わっていなかったんです。

今、私はやっと、心理学の講座など、自分が本当にやりたいことを事業にしています。
心理学を学んだからこそ、より一層、目的を明確にすることの大切さが分かるようになりました。

手段の目的化

本来手段でしかなかったものが、目的になってしまう。
その結果、全く望まない方向へ進んでしまう・・・
そういう場面をよく見かけるようになりました。

例えば、以下のような感じです。

配信系

本来は、見てもらうことで伝えたい内容があるはずですが、ただ「見てもらうこと」が目的になってしまった人の中から、迷惑系なんてものが生まれてしまっています。

バンされて結局稼ぎを失ったり、逮捕される人までいる始末です。

SNS営業

事業を拡大するためにSNSでつながりを増やすことは良いことですが、「つながりを増やすこと」が目的になってしまい、つながってすぐに営業DMを送ったりする人がいます。

「数打ちゃ当たる!」は、いつの時代も営業の鉄則の一つだとは思いますが…
SNSという、つながるだけでなく交流までできるツールを使っているのに、交流すっ飛ばして営業をかけてしまう。

SNSでつながった人を、見込み客リストか何かだと勘違いしてしまった結果、迷惑がられてしまうことに…

人脈紹介

ビジネスしている人同士をつないでくれるサービス。
無料の方もいて、本来とてもありがたいサービスで、私もお世話になることがあります。

ただ本来は、つながったあと、何かが生まれていくことが目的だと思うんですが、「つながること&つなげること」だけが目的になってしまうと、単なる「営業先(見込み客)紹介」になってしまうことがあります。

人脈紹介には、もちろん自分の商材やサービスの話を聞いてもらいたい人もいますが、協業できる人や仲間を探している人もいます。

紹介されてまずLINEでつながった段階で、いきなり「弊社のサービスに興味があるということでよろしいですか?」という確認が入ったりすると、ちょっとした興味しかなかった場合、違和感につながります。

「あれ?完全にこっちが見込み客なんだな」と感じるので、結局面談する前にお断りすることに。
これも結局営業リスト化になってしまっているんですよね。
誰にも悪意はないのに、なんだか後味の悪い気持ちになって、結局紹介そのものをお断りしたことも何度かあります。

紹介者の目的なのか、それともつなげてほしい人の目的なのか、どっちがズレているのかを判別しにくいのも厄介です。

起業塾・起業コンサル

私は起業支援を活用してとても助かったので、起業塾やコンサルを否定するつもりは一切ありません。
ただ、ゼロイチなどの初期の段階を支援する事業者の中に、手段が目的化している人に何人か出会いました。

ゼロイチというのは、ゼロの状態から最初の売上を作るところあたりを支援するということ。
まったくの未経験者からすると、とてもありがたい目的に見えるわけですが…

その後、どうなりますか?
ということです。

いろんな事業に手を出してきた中で感じるのは、ゼロからイチは、決してそんなに難しい話ではありません。
大体全ての事業で、ゼロイチは普通にできました。

でも事業って、その後も続くものです。

私は今の心理系の仕事を始めて数年の頃、そういう営業を何度か受けました。

私が出会った人の中には、「売りたいものと売れるものは違いますから!」と、私の作ったサービスより前に、まずは売れるものを1つ作りましょうと勧めてきた人もいました。

まずは1つ売れることで、自分の作ったものでお金をいただく体験をする、ということらしいんですが…
私はその時すでに、会社を興して20年くらい経っていたので、自分の作ったサービスを売った経験は何度もあるわけです。
それを知っていてなお、こういう言い方をされたので、これはもうその人自身の考えですらなく、ただの話法として言わされているんだなと感じました。

おそらくは、自分でサービスを作れていない人を対象にしているんだと思いますが、「まず1つ売れるという体験」をゴールにしているということでしょう。

ゼロイチを宣伝文句にはしながらも、それ以降の道筋までコンサルしてくれるのであればいいんですが、ゼロイチが目的になっているとしたら…

その後また、誰かの支援が必要になる可能性があります。

カウンセラー・コーチ

私も心理系の世界で働く人間として、自戒を込めて取り上げます。

こういう仕事をしようと思う方は、「人の役に立ちたい!」とか「人を助けたい!」という思いを持っている方が多いです。
でもそれ、どこを目指しているのかってことです。

相談に乗っていく中で、クライアントが自分で解決をしていけるようになることが本来の目的のはずですが…
「相談に乗ること」が目的になってしまうと、クライアントを卒業させないという方向へ向かってしまう人が、決して少なくないと感じています。

それが自分の収入のためだったら言語道断ですが、それこそが人の役に立つこと、人を助けることだと思い込んでしまう人もいたりします。

ただどんな理由だったとしても、結果として、クライアントの変化を妨げることに繋がってしまいます。

どんなビジネスであっても、人の困りごとを解決するという部分は少なからずあると思いますが、心理系は「解決させないようにする」ということが決してできなくはないという点で、一層気を付ける必要があると思っています。

以上のように、本来のスタートラインがゴールになってしまうと、いろんなことを見失ってしまう、場合によっては、一番大切なものを見失ってしまう可能性が高いと感じています。

意図を明確に

私が違和感を覚えたのは、大昔に私がやらかした、手段の目的化と同じようなことをやっている人が、なんだか増えてきているなと感じたからです。

ただ何ごとも、最初の動機なんて大したことなくていいと思っています。

ちょっとやってみたい!興味がある!

特に資金は不要とか、大したリスクのないものなら、そのくらい気軽に起業したっていいと思います。

ただ、それが副業か本業かに関係なく、その事業を少しでも長く続けたいと思うのであれば・・・

  • なぜそれをやりたいのか?
  • 何のためにやるのか?

という、自分の中の意図は、どこかの段階で明確にしておくことが大切だと思います。

書籍

『武士道×心理学:自分に還る7つのあり方』

「自分を変える」より「自分に還る」ための
「武士道の使い方」

著者:平野尚紀
ココロエ 代表
正しく、強く、人に譲り、迷惑をかけず…
日本人はただ生きているだけで、常に頑張り続けています。
しかし、その頑張りに気付くことなく、むしろ自己否定ばかりしている人が圧倒的に多いのはなぜなのか…
自己肯定も自信も、自由や幸福も、全てが既に自分の中にあるということに気付いてほしい。
そんな思いを持って、人生や自分自身と向き合おうとする皆さんと向き合っています。
NLP(神経言語プログラミング)や認知行動療法などの心理学とともに、武士道の7つの徳目(義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義)に基づいたオリジナルの心理スキルを活用するなど、日本人独特の心理にも向き合っていることが私たちの強みです。

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